雪原決死行

雪原決死行〈上〉 (扶桑社ミステリー)

雪原決死行〈上〉 (扶桑社ミステリー)

雪原決死行〈下〉 (扶桑社ミステリー)

雪原決死行〈下〉 (扶桑社ミステリー)

16歳のスコットは、リゾートスキーの最中、母親の目を逃れ、友人の運転するセスナ機でヘビメタのコンサートへ向かった。しかし吹雪の中、セスナは森の中へ墜落する。スコットがたった一人で、雪深い山奥からの脱出を試みる中、地元の警察では大統領の訪問を控え、見込みのなさそうな捜索活動に積極的はなかった。息子の生存を信じて疑わない父は必死に救出を訴える。その頃、スコットは別のトラブルに巻き込まれていた。

 うーん。タイトルからすると、少年が一人、大自然の中命がけのサバイバルをする話だろうと思っていた。まあ、確かに生き残って、生と死の狭間で雪山から脱出を試みる少年の奮闘ぶりには読み応えがあった。
 が、その後、もう一つ大きな展開があり、実際はそちらに比重があるようだ。雪山からの脱出の途中、関わった謎の男の秘密を知ったスコットは、彼からも逃げなければならなくなる。追いつ追われつ、次から次へとスコットに降りかかる困難の連続は、読ませるものがあって面白かった。
 が、どうもかったるいと感じたのは、「家族の物語」的な部分。両親は離婚しており、スコットは父親と暮らしている。友達同士のように固い絆で結ばれた父子関係は良好。しかし利己的に見える母親とはあまりうまく行っていない。
 その関係を修復しようとした母親とスキー旅行へ来て、事故、事件に巻き込まれたわけだが、スコットのサバイバルの間、間に挿入される、母親の事情、父親の事情、元夫婦の状態に関する記述があまりにも冗長である。
 それがうまくスコットが陥った危機的状況に絡んでいるならともかく、あまり関係はなかった。つまりは、スコットの冒険と平行して、この一家というより夫婦の関係についての物語ということのようだ。
 しかも、この夫婦、スコットのサバイバルを通して関係が修復されていくのかと思いきや、それぞれの嫌な面が際だつばかりで、最終的には歩み寄りはあるもののそれも中途半端で、結局どうでも良いような話だったとしか思えない。
 この部分をもう少し削れば、或いは全くない方がサスペンスフルで面白かったと思うのだが。
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