稲垣『犬神家の一族』

 夜、見るつもりもなく、稲垣の『犬神家の一族』を見始めて最後まで。いや、その前の、稲垣が司会をやっている番組の心霊写真特集を見ていたから、そのままチャンネルが合っていただけだけど。あの番組はオカルトのネタよりも、稲垣と子どもの掛け合いが面白いな。
 それはともかく犬神家。うーん、まあまあだったな。これって、どうなるんだっけって興味があったから終いまで見られたけど、ちょっと冗長な印象で退屈。その割にはわかりにくい部分も多かったし。
 そして吾郎ちゃんの金田一はちょっとカラっとしすぎかな。カラっとしていてもいいけど、肝心な所では、人の生の哀しさみたいなもんが、もうちっと出てもいいんでは。
 比べるもんでもないけど、やはり石坂浩二の映画版の方が雰囲気があって良い。横溝物独特の旧家と因習のどろついた空気感が圧倒的で。音楽もすごく良かったしな。そう言えばサントラ盤、持ってるよ。
 その点、稲垣金田一のテレビ版はどろどろ感が足りなかったかな。ちょっと淡白で、血の怨念めいた人間の怖さとか、女の業の仄暗い匂いみたいなものがあまり感じられなかった。映画版も旧テレビ版も暗い色調だったから、今風に明るめにしたのかもしれないけど。
 まあ、テレビドラマ的には頑張ったと言えなくもない。良いフィルム使ってそうな映像がきれいだったし、衣裳にも金がかかっていた。少なくとも二時間ドラマ臭は無かったな。
 三田佳子が良かったね。ちょっと見ないうちに老けたし、盛りを過ぎちゃった感じはあるけど、まだまだきれいで、ああいう役をやらせたら天下一品だな。それで保ったようなもんかな、ドラマ的には。かえって勿体ない気がする。
 しかし、その他の役者は小物揃いだったから、制作費が間に合わなかったのか。エンディングの配役に佐藤慶の名前があったけど、え、どこに出てたっけ? と、ネットで調べてしまった。諸悪の根元、佐兵衛役であった。わからないって。岸田今日子が同じ琴の師匠役で出ていたのは、映画版へのオマージュかな。

 
 金田一ものって、地方の旧家の血にまつわる連続殺人事件というパターンが多く、しかも俳句やら手まり歌やらに合わせて奇天烈な演出をし、三姉妹とか兄弟とかが憎み合ったりして、でも必ず清らかな乙女がいたりして、どれも似ている。
 石坂映画版と古谷テレビ版を殆ど見ているので、全てがごっちゃになっていて、今日も見ていて、蘇ってくる記憶が混じってしまって、なかなか筋を思い出せなかったなあ。まあ、大物女優が犯人というパターンは毎度のことだから、三田佳子が犯人だということだけはわかっていたけど。
 ちなみに一番好きな金田一古谷一行版(旧)。