スタイルズ荘の怪事件

スタイルズ荘の怪事件 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

スタイルズ荘の怪事件 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

 旧友の招待で滞在していたスタイルズ荘でヘイスティングズは殺人事件に巻き込まれた。毒殺された老女主人には再婚した年下の夫、血の繋がらない息子とその妻など複雑な人間関係があった。遺産目当てと思われるこの殺人事件の犯人は誰か。調査に乗り出したのはヘイスティングズの知人であり、亡命中のベルギー人、元刑事のエルキュール・ポアロだった。

 クリスティー文庫の第一巻、デビュー作。やかましくて気取った小男、ポアロ登場。
 デビュー作だけあって、詰め込みすぎの印象で、まとまりにやや欠ける。しかし、推理の材料はきちんと物語の中に組み込まれ、間の抜けた好漢ヘイスティングズのミスリードも微笑ましい。騙されまいとする読者の心理の裏を行く展開はさすが。
 しかし、読んでいて退屈だったのは、登場人物の価値観や人生観などに共感できるものが何もなかったからだろうか。そういうものを求めて読んでいるわけではないにしても、誰が犯人なのかという謎解き以上に、この先この人たちはどうなるのだろうという興味がわかなかった。
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