オーデュボンの祈り

オーデュボンの祈り (新潮文庫)

オーデュボンの祈り (新潮文庫)

 結局、ジャンルはミステリってことかな。ネタバレ無しに感想を書くのは難しい物語だが、ネタバレ注意を促してまで書くほどのこともないか。
 殺人を成立させるために作られた世界観が微妙なバランスで成り立っている物語だった。謎そのものは複雑ではないし、展開もストレートだが、荻島という異世界が中途半端に魅力的。中途半端というのは、異質な部分が全て謎のために用意されたものなので、それが島の魅力なのか、殺人の小道具なのか、曖昧な気がするからか。
 異世界の長閑な描写の合間に時折、人間の純化された悪意を挿入することで、あくまで事件が魔法的な出来事ではなく、「ありえる」殺人が成立する世界であることを印象づけるそのバランスが面白い。
 登場人物は、人間としての魅力はあまり感じられないが、ファンタジーとしての魅力は立っているように思う。
 優午が生まれた経緯や、島に欠けている何か、などはバランスを少し偏らせているような印象は残ったものの、最後まで引っ張られる面白さはあった。
 で、結局真相は……。
(6)